『新唐書』(しんとうじょ)は、中国の唐代の正史である。五代の後晋の劉昫の手になる『旧唐書』(くとうじょ)と区別するために、『新唐書』と呼ぶが、単に『唐書』(とうじょ)と呼ぶこともある。
北宋の欧陽脩・曾公亮らの奉勅撰1、225巻、仁宗の嘉祐6年(1060年)の成立である。
構成
- 本紀、10巻
- 志、50巻
- 表、15巻
- 列伝、150巻
編纂の経緯・後世の評価
『旧唐書』は、唐末五代の戦乱の影響で、武宗以後の皇帝は実録に欠落があるなど史料不足による不備が大きかった。宋代になって、新出の豊富な史料によって、その欠を補ったのが、本書である。
本紀・志・表は欧陽脩が編纂。列伝は宋祁の撰とされるが、実際には宋敏求らの多数の当時を代表する学者が関与している。志の中に「兵志」を新設して、表を多用したのは、その功績とされている。
また文章も、唐宋八大家の一人であり古文家の大立者である欧陽脩のものであるため、簡潔な文体で叙述されている。ただ、簡略に過ぎていることや、詔勅の文章を古文に改変したり、中には錯誤も見られるため、史料的な価値では『旧唐書』に及ばないとされる。
同時期に『資治通鑑』を編纂した司馬光は、その「唐紀」の材料の多くを『旧唐書』から取り、本書にはほとんど依拠していない。本書の編纂に参画した呂夏卿は、本書の成立の直後に『唐書直筆新例』1巻を著すと、呉縝は『新唐書糾謬』20巻を著した。
宋代に盛んとなった中華思想を背景に、本書には復古的で儒教的な道義を重視する態度が貫かれている。「春秋の筆法」と呼ばれる主観的な叙述を用いているため、客観性を欠くという指摘がなされている。また、李白が乗船中、酒に酔って水面に映る月を取ろうとして船から転落して死亡した、と言う有名な俗説を取り入れてしまっている点も批判されている。
清朝の王鳴盛(『十七史商榷』)や趙翼(『二十二史箚記』)に代表される考証学の学者たちも、本書に対しては批判的である。
天体観測の記録も含まれており、天文学史の分野においては775年の宇宙線飛来と思われる記述など当時の天文現象を記述した貴重な資料となっている。
日本について
『新唐書』巻二二〇、東夷日本伝に「天智死、子天武立。死、子總持立。咸亨元年、遣使賀平高麗、後稍習夏音、悪倭名、更号日本」とあり、咸亨元年すなわち670年より後に總持(持統天皇か)が「倭」をあらためて「日本」と号したとの記述がある2。『旧唐書』では倭と日本が並立した状態で書かれているが、『新唐書』では「日本伝」としてまとめられている。ただし上記の部分に続けて「使者自言、國近日所出、以爲名。或云日本乃小國、爲倭所并、故冒其號」とあり、倭が小国だった日本を併合して国号を取ったという異伝を併記している。『南斉書』によると479年に加羅の荷知王が南朝の斉に遣使して「輔国将軍・本国王」に封じられており、加羅は倭王武の「都督」に含まれるため、少なくとも「本」についてはこの異伝は当たらずとも遠からずと言える。
隋の開皇末に天皇家の目多利思比孤が初めて中国と通じたと書かれている。そして、日本の王の姓は阿毎氏であること、筑紫城にいた神武が大和を統治し天皇となったことなどが記載されている。出典は示されていないが、宋史日本伝の記事から、東大寺の僧侶奝然が宋の太宗に献上した『王年代紀』を参照したと考えられている。
其王姓阿每氏 自言初主號天御中主 至彥瀲 凡三十二世 皆以 尊 爲號 居築紫城 彥瀲子神武立 更以 天皇 爲號 徙治大和州 次曰綏靖 次安寧 次懿德 次孝昭 次天安 次孝靈 次孝元 次開化 次崇神 次垂仁 次景行 次成務 次仲哀 仲哀死 以開化曾孫女神功爲王 次應神 次仁德 次履中 次反正 次允恭 次安康 次雄略 次清寧 次顯宗 次仁賢 次武烈 次繼體 次安閒 次宣化 次欽明 欽明之十一年 直梁承聖元年 次海達 次用明 亦曰目多利思比孤 直隋開皇末 始與中國通 次崇峻 崇峻死 欽明之孫女雄古立 次舒明 次皇極 — 新唐書卷220 列傳第145 東夷3
以上のとおり天御中主から彥瀲までの32世、天皇は神武天皇以下皇極天皇まで列挙されている。またその後には光孝天皇までが詳述されている。ただし、天御中主から彥瀲までの世数は宋史日本伝では「二十三世」であり、全ての名前が列挙されて数も合っているため、「三十二世」は二と三を取り違えた可能性が高い。『古事記』や『日本書紀』と異なる記事で注目される。
また遣唐使に加わった橘逸勢や空海等の名が見える。最後に「邪古 波邪 多尼三小王」について触れられ(時代は明らかでない)、これらは屋久島、隼人、種子島のことともいわれる。
なお、唐書を読んだフビライ・ハンは、「日本には金銀を豊富に産出するとある」と書かれていたことから日本に興味をもち、親交を結ぼうとしたが、当時の執権である北条時宗にすげなく断られたことがフビライの逆鱗にふれて、元寇につながったとされる。
内容
本紀
- 本紀第一 高祖
- 本紀第二 太宗
- 本紀第三 高宗
- 本紀第四 則天皇后・中宗
- 本紀第五 睿宗・玄宗
- 本紀第六 粛宗・代宗
- 本紀第七 徳宗・順宗・憲宗
- 本紀第八 穆宗・敬宗・文宗・武宗・宣宗
- 本紀第九 懿宗・僖宗
- 本紀第十 昭宗・哀帝
志
- 志第一 礼楽一
- 志第二 礼楽二
- 志第三 礼楽三
- 志第四 礼楽四
- 志第五 礼楽五
- 志第六 礼楽六
- 志第七 礼楽七
- 志第八 礼楽八
- 志第九 礼楽九
- 志第十 礼楽十
- 志第十一 礼楽十一
- 志第十二 礼楽十二
- 志第十三上 儀衛上
- 志第十三下 儀衛下
- 志第十四 車服
- 志第十五 暦一
- 志第十六 暦二
- 志第十七上 暦三上
- 志第十七下 暦三下
- 志第十八上 暦四上
- 志第十八下 暦四下
- 志第十九 暦五
- 志第二十上 暦六上
- 志第二十下 暦六下
- 志第二十一 天文一
- 志第二十二 天文二
- 志第二十三 天文三
- 志第二十四 五行一
- 志第二十五 五行二
- 志第二十六 五行三
- 志第二十七 地理一
- 志第二十八 地理二
- 志第二十九 地理三
- 志第三十 地理四
- 志第三十一 地理五
- 志第三十二 地理六
- 志第三十三上 地理七上
- 志第三十三下 地理七下
- 志第三十四 選挙上
- 志第三十五 選挙下
- 志第三十六 百官一
- 志第三十七 百官二
- 志第三十八 百官三
- 志第三十九上 百官四上
- 志第三十九下 百官四下
- 志第四十 兵
- 志第四十一 食貨一
- 志第四十二 食貨二
- 志第四十三 食貨三
- 志第四十四 食貨四
- 志第四十五 食貨五
- 志第四十六 刑法
- 志第四十七 芸文一
- 志第四十八 芸文二
- 志第四十九 芸文三
- 志第五十 芸文四
表
- 表第一 宰相上
- 表第二 宰相中
- 表第三 宰相下
- 表第四 方鎮一
- 表第五 方鎮二
- 表第六 方鎮三
- 表第七 方鎮四
- 表第八 方鎮五
- 表第九 方鎮六
- 表第十上 宗室世系上
- 表第十下 宗室世系下
- 表第十一上 宰相世系一上 - 西眷裴氏・洗馬裴氏・南来呉裴氏・中眷裴氏・東眷裴氏・彭城劉氏・尉氏劉氏・臨淮劉氏・南陽劉氏・広平劉氏・丹陽劉氏・曹州南華劉氏・河南劉氏
- 表第十一下 宰相世系一下 - 皇舅房蕭氏・斉梁房蕭氏・三祖房竇氏・平陵房竇氏・陳氏・封氏・観王房楊氏・越公房楊氏・京兆高氏・晋陵高氏・河南房氏・宇文氏
- 表第十二上 宰相世系二上 - 長孫氏・京兆杜氏・襄陽杜氏・洹水杜氏・濮陽杜氏・武陽房隴西李氏・姑臧房隴西李氏・丹陽房隴西李氏・南祖趙郡李氏・東祖趙郡李氏・西祖趙郡李氏・遼東李氏・江夏李氏・漢中李氏
- 表第十二中 宰相世系二中 - 琅邪王氏・太原王氏・京兆王氏・館陶魏氏・宋城魏氏・鹿城魏氏・温氏・戴氏・侯氏・岑氏
- 表第十二下 宰相世系二下 - 河東張氏・始興張氏・馮翊張氏・呉郡張氏・清河東武城張氏・河間張氏・中山張氏・魏郡張氏・汲郡張氏・鄭州張氏・扶風馬氏・茌平馬氏・褚氏・鄭州崔氏・許州鄢陵房崔氏・南祖崔氏・清河大房崔氏・清河小房崔氏・清河青州房崔氏・博陵安平崔氏・博陵大房崔氏・博陵第二房崔氏・博陵第三房崔氏・于氏
- 表第十三上 宰相世系三上 - 西眷房柳氏・東眷房柳氏・韓氏・来氏・安陸許氏・辛氏・任姓・盧氏
- 表第十三下 宰相世系三下 - 上官氏・楽氏・孫氏・九真姜氏・丹徒枝陸氏・太尉枝陸氏・侍郎枝陸氏・新安趙氏・敦煌趙氏・南陽趙氏・閻氏・郝氏・南祖薛氏・西祖薛氏
- 表第十四上 宰相世系四上 - 西眷韋氏・東眷韋氏・逍遙公房韋氏・鄖公房韋氏・南皮公房韋氏・駙馬房韋氏・龍門公房韋氏・小逍遙公房韋氏・京兆韋氏・華陰郭氏・昌楽郭氏・中山郭氏・武氏・騫氏・沈氏・趙郡蘇氏・武功蘇氏・范氏・邢氏・傅氏・史氏・宗氏・格氏
- 表第十四下 宰相世系四下 - 欧陽氏・狄氏・河東袁氏・陝郡姚氏・婁氏・豆盧氏・永安周氏・吉氏・顧氏・朱氏・唐氏
- 表第十五上 宰相世系五上 - 敬氏・桓氏・祝氏・紀氏・北祖鄭氏・南祖鄭氏・滎陽鄭氏・滄州鄭氏・鍾氏・広平宋氏・源氏・安定牛氏・苗氏・呂氏・第五氏
- 表第十五下 宰相世系五下 - 常氏・喬氏・關氏・渾氏・瀛州斉氏・董氏・河南賈氏・権氏・皇甫氏・程氏・令狐氏・段氏・元氏・路氏・舒氏・白氏・夏侯氏・蔣氏・畢氏・曹姓・徐氏・下博孔氏・独孤氏・柳城李氏(1)・武威李氏・高麗李氏・柳城李氏(2)・鶏田李氏・范陽李氏・代北李氏・営州王氏・太原王氏・安東王氏・田氏・烏氏
列伝
- 列伝第一 后妃上 - 太穆竇皇后・文徳長孫皇后・徐賢妃・王皇后・則天武皇后・和思趙皇后・韋皇后・上官昭容・粛明劉皇后・昭成竇皇后・王皇后・貞順武皇后・元献楊皇后・楊貴妃
- 列伝第二 后妃下 - 張皇后・章敬呉太后・貞懿独孤皇后・睿真沈太后・昭徳王皇后・韋賢妃・荘憲王皇后・懿安郭太后・孝明鄭太后・恭僖王太后・貞献蕭太后・宣懿韋太后・尚宮宋若昭・郭貴妃・王賢妃・元昭晁太后・恵安王太后・郭淑妃・恭憲王太后・何皇后
- 列伝第三 宗室 - 李道宗・李道興・李孝基・李道玄・李叔良・李孝協・李思訓・李晋・李幼良・・・・・・・・・・
脚注